月別一覧:2016年03月

弁護士報酬の未回収問題

弁護士事務所において、収入で大きな割合を占めるのが弁護士報酬です。

弁護士報酬は何十万、時には何百万円にもなる案件もあるため、弁護士事務所の収入の柱となります。

そのため、依頼を受けた際には、「○○さんの案件は、半年後くらいには弁護士報酬の50万円の入金になる。」と、弁護士事務所の資金繰りに組み入れていると思います。

しかし、予定していた弁護士報酬の支払いが遅れたり、払ってもらえないとなると、ギリギリで経営をしている弁護士事務所などは、死活問題になりかねません。

そのため、弁護士事務所において弁護士報酬の未回収問題は、重要課題と言えます。

弁護士報酬の未回収は大きく分けて、「お金がないから払えない」と「お金があるにもかかわらず支払わない」の2通りあります。

お金がないので支払えないと言うケースは、依頼人との面談時に弁護士報酬の説明を丁寧にすることで大半は回避できます。

依頼人も「これだけの費用が掛かるのならば、弁護士に依頼するのは無理だ。」とおのずと自分から辞退しますし、債務整理や自己破産などの案件で依頼人自体の経済状態が思わしくない場合でも、依頼の時点で依頼人の収入状況や預金の状態を把握できるため、先払いをお願いしたり手続き後の分割払いの計画を立てたりと、未回収のリスクを減らすことができます。

ですが一番厄介なのが、「お金があるにもかかわらず支払わない」ケースです。

ただ単に銀行に振り込みに行くのが面倒と言ったものぐさな人ならば、直接回収に伺えば意外とすんなり支払ってもらえることが多いのですが、そのほかは一癖も二癖もある依頼人が多く、対応も難しくなります。

もちろん、法的な対応策は弁護士の方が詳しいでしょうが、「弁護士に依頼したが、自分の希望の結果にならなかった」「弁護士報酬を支払う段階になって、金額が大きくて支払うのが嫌になった」「初めから弁護士報酬を支払うつもりはなく、難癖をつけて支払わない」と、モンスタークレーマー並みの理不尽な理由で支払わないと言うこともあります。

こういったクレーマーは正論を言っても理解してもらうことが難しいのですが、「弁護士報酬を支払ってもらわなければ、最悪裁判になって給料の差し押さえなどになり、会社の方に裁判していることが分かります。」と、払わないことで後々自分が困ったことになると言うことを伝えた方が効果的な場合があります。

相談しやすい弁護士事務所の相談スペース作り

大手の弁護士事務所のほとんどが、個別に相談室を設けています。

依頼人によっては弁護士事務所の職員といえども人の目が気になる事もあるので、落ち着いて相談スペースがあると言うのは良いと言えます。

ですが、個人の弁護士事務所で相談室を設置と言うのは厳しいため、日差しの良い事務所の窓側に客席用のソファと机を置いているだけと言うところも多いのではないでしょうか?

実は、これは相談スペースとしてはNGです。

先述したとおり弁護士事務所の事務員がいる場合には、依頼人からすると「聞かれたくない」との心理が働くため、話づらくなってしまいます。

また視界に事務所の棚や雑多なものが見えると、気が散りやすいと言う心理的な面もあります。

このような場合は、身長よりも高い衝立で相談スペースを囲う方法をとると、少しは解消できることとなります。

また、窓際と言うのは外が見られて開放感がありますが、逆に外側からも見られるのではないかという不安があるため、あまり向きません。

窓際にしか相談スペースがない場合には、ブラインドかカーテンで必ず目家駆使できるようにしておく方が良いです。

「うちの弁護士事務所は専用の相談室があるから、大丈夫。」と言う方もいらっしゃるかもしれませんが、心理学的には通常の相談室は相談しにくい環境なのです。

真っ白な壁紙に応接用のイスと机のセットが置いてあり、壁にはなんだか高そうな絵画が飾ってあると言うのが基本だと思います。

心理学では白と言うのは「清潔・純真・正義」を表すため良いように思えますが、人は絶対的な正義の前に長時間いると心に疲労を抱えてしまいます。

そのため、壁に絵画が掛けてあったり、部屋の隅に花が活けてあったりすると、人は自然とそれに視線が行ってしまうのですが、興奮色である赤とか心理的不安を覚える紫は避けた方が無難です。

部屋のアクセントに色を使うのならば、心が明るくなる黄色や心を落ち着かせる緑などをメインとした配色にした方が良いでしょう。

弁護士事務所の退職金事情

弁護士事務所の6割が、弁護士の在籍数が1人もしくは2人であるため、なかなか退職金のことまで考えているところは少ないのではないでしょうか?

弁護士が一人だけの弁護士事務所であれば、利益は弁護士一人のものになりますので、退職金のことは考える必要はないでしょうが、他に弁護士や事務員がいたりした場合には、福利厚生の意味から検討した方が良いかもしれません。

日本での退職金制度は、従業員が30人以上の企業の約80%以上が、何かしらの退職金の制度を設けています。

その多くの会社は、厚生年金基金や確定給付企業年金を利用して、退職金を支払っています。

ですが、「弁護士事務所と言っても、弁護士が2人・事務員2人の事務所だし、厚生年金基金を使うのもなぁ。」と言うところも多いと思います。

そういった小規模な弁護士事務所の場合にお勧めなのが、小規模企業共済と中小企業退職金共済です。

小規模企業共済は、従業員が5人以下の会社経営者及び役員に対する共済で、退職だけでなく廃業の際にも支払われます。

また、従業員が5人以上になっても加入し続けることができ、掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」として、課税対象所得金額から控除されます。

中小企業退職金共済は従業員に対する退職金の制度で、中小企業退職金共済に従業員の共済金を毎月支払うと言う形になります。

従業員に退職金を支払う場合は、退職した従業員自体が中小企業退職金共済に直接請求して、従業員の口座に振り込まれると言う形なので、弁護士事務所側の手続きが少なくて済むと言う利点があります。

しかも、弁護士事務所からの退職金ではなく、第三者機関からの退職金の支払いのため一定のルールが出来るので、「長く働いていたのに、Aさんより少ない。」「Bさんより給料が多かったのに、退職金が少ない。」と言ったトラブルが起きにくくなります。

裁判以外の仕事で依頼率アップ

法律事務所専用システムThemis開発担当の田原です。

近年、司法試験の改正から弁護士の数が増えたのですが、逆に裁判所での訴訟数は減っています。

単純に考えても、弁護士が増えれば一人あたりの訴訟件数が減るのに、訴訟自体が減っているのですから、弁護士事務所からすると訴訟件数は激減していると言えます。

一般人からすると弁護士と言うと法廷で華麗に弁舌を述べると言ったイメージですが、実際には裁判所での活躍は減ってきているのが実情でしょう。

そのため、弁護士事務所でも裁判以外の仕事も取り入れているところもあります。

その一つが、登記の代理等です。

不動産売買の場合、ほとんどの場合で不動産会社が売主であったり仲介であったりなどで関連しているため、登記は不動産会社指定の司法書士に丸投げと言うのが慣例となっています。

長年、司法書士の独断場であった不動産登記ですが、弁護士事務所も手数料を司法書士並みにしたり、相続がらみの仲裁を合わせてすることにより、少しずつ増えているそうです。

他にも数を増やしているのが、遺言書や公正証書・離婚協議書など、法的な効力を持つ書類の作成です。

インターネットが普及する前だと、「法的な書類は弁護士に頼まなければいけない。」と敷居が高いと考えがちだったのですが、今では「一般人でも作成できる」と言う風に考えが変わりつつあります。

しかし、書類の書き方が分からなかったり、不備があって書類の効力がなかったりするのではないかとなど不安がぬぐえないと言った意見があります。

そういった人向けに遺言書などを一から作成をだけでなく、添削やチェックのみを行うといったお手軽なプランを設けている弁護士事務所もあります。

また、「遺言書の作成講座」「公正証書を作るにあたって」など、講座形式にして一度に複数人教えることにより、弁護士事務所側は人数を増やすことにより収入がアップし、受講する側はマンツーマンよりは安く作成できると、毎回予約が殺到している弁護士事務所もあります。