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顧問がなくても弁護士事務所は経営できる?

一昔前の弁護士事務所の安定した収入源は顧問弁護士料でした。

師匠や兄弟子と言ったところの弁護士が在籍する弁護士事務所にイソ弁として勤務し、数年して独立した後も先輩弁護士に紹介された企業のツテで、顧問契約を増やしていくと言うのがスタンダードでした。

そのため、地元の商工会議所や商店街などの会合に参加するのはもちろんのこと、ライオンズクラブや町内会・PTAなど、人が集まるところには積極的に参加する弁護士もいました。

今も顧問弁護士料が、毎月の弁護士事務所の収入源と言うことは変わりませんが、最近では顧問契約を1件も持たない弁護士も少なくなく、若手の弁護士になるほどその傾向が強くなってきます。

高齢の弁護士が地域の企業の顧問契約を独占していて、若手の弁護士に回ってこないと言うこともありますが、デフレの期間が長かったこともあり、社歴が浅い企業では経営者が若いこともあり、「顧問料がもったいない」という考えがあることも挙げられます。

それを見越してか、毎月の顧問料を1万円以下に抑えて、有事の時には一般の相談者よりも割安で法律相談にのる弁護士事務所も出てきています。

いわば、「会員制の弁護士事務所」にして、毎月の会費でそれなりの運営ができる体制を整えていると言う、ある意味賢い運営と言えます。

一方、顧問契約が1件もない弁護士事務所は、いわば毎月新規顧客の獲得が出来るかどうかが死活問題となるため、いかに集客するかが問題となってきます。

インターネットの広告などに特化し常に新しい顧客を広く集めるパターンと、今までに顧客となった方の紹介と言った口コミに集客を重きにするパターンの2通りが、考えられます。

どちらも一長一短があり、弁護士事務所の得意分野や所在する地域などにより、どちらが良いとは一概には言えないため、若手になるほど顧客の開拓は手探り状態が続くと言うことになるでしょう。

弁護士事務所の掲示板の有用性

「掲示板」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか?

街角のお知らせを貼る文字通りの掲示板を思い浮かべる方もいれば、ネットのスレッドの掲示板を思い浮かべる方もいるでしょう。

弁護士事務所の掲示板は、一昔前ならばホワイトボードのカレンダーに予定が書きこまれていたり、ちょっとしたお知らせのメモをマグネットで貼り付けしたりしていました。

「いまだにそうしている」と言う弁護士事務所もあれば、「なつかしい」と言われる弁護士事務所と様々にあると思いますが、こういった掲示板は減りつつあります。

もともと、弁護士一人だけの弁護士事務所であれば、掲示板自体の必要性が少なく、自分の持っているスケジュール帳に書きこむだけで事足りるからです。

弁護士と事務員や、弁護士2人に事務員2人といった比較的小規模な弁護士事務所はどうかと言うと、掲示板を活用しているところもありますが、現在はパソコン上で管理しているところが多くなってきています。

「パソコン同士をつなげるのは面倒くさそう」と思うかもしれませんが、現在はクラウドが主流となっているため、弁護士事務所内のパソコン同士どころか、外出先でもスマホで確認と言うことも出来ます。

これの一番の利点は、全員でのスケジュールや情報の共有化があります。

複数人数での弁護士事務所の場合、お互いが「言った、言わない」となると齟齬を生じたままになってしまいます。
しかし、こういった掲示板であれば、「確認しなかった方が、確認不足で悪い」と言うことになり、責任の所在が明確化します。

もっとも、ここまで堅苦しく考えなくても、新しく予定を入れる際にお互いにフォローを入れられると言った利点が大きいと言えます。

現在は、簡単に承認された複数台のパソコン・スマホでのみ共有できる掲示板(スケジュール板)もあるため、気軽に利用してみても良いかもしれません。

あえて広告をしない弁護士事務所

弁護士数の増加に比例して、弁護士事務所の数も増えてきており、まさしく弁護士事務所は群雄割拠の時代になっています。

そのため、広告活動や集客活動に熱心な弁護士事務所も増え始め、今や飽和状態になっていると言えます。
インターネットの弁護士事務所のサイトを作り、ネット広告は当たり前。

法律相談も初回30分は無料など、いい意味でも悪い意味でも「一般人に親しみやすい弁護士事務所」の雰囲気づくりに、日々腐心されています。

逆にそういった広告活動や集客活動に疲れて、ほとんどそういった活動をしない弁護士事務所もあります。

ある弁護士の方は以前よりブログを書くことが趣味で、弁護士事務所の事はもちろん、日々の普通の出来事や、最近読んだ本の内容、趣味のアウトドアスポーツの事を長年つづられていました。

内容の楽しさと、軽快な文体から訪問数の多い弁護士ブロガーの一人でした。

弁護士事務所の広告が解禁となった時、この弁護士も自分のブログに自分の弁護士事務所のリンクを張り付け、毎日の日記の下に弁護士事務所のバナーを表示するようにしました。

そうすると、もともと人気ブロガーであったために、日本中から依頼が殺到し、事務所の予約は半年以上先までいっぱいになってしまいました。

これだけ聞けばうらやましい話ですが、実際には違いました。

人気ブロガーの顔を見たいだけの冷やかしが多く、中にはドタキャンする者もあらわれましたが、「ドタキャンか単なる遅刻か」の判断がつかず、結局予約でとっている30分間を無駄に使うことが多くなりました。

さらには、依頼をする気になってはくれているものの、無料相談の場合にはやはり金銭的に困窮している方が多く、実際の依頼までには結びつかないと言ったことから、自身のブログと弁護士事務所のリンクは大々的に行わないようにされました。

もちろんすべての弁護士事務所がこのようなことになるとは限りませんが、あえて派手に広告活動を行わないというのもいいのかもしれません。

弁護士事務所の法人化のメリット・デメリット

普通の個人商店であれば、従業員が増えたなどの理由から株式会社などへの法人化をするところもあります。

有限会社が廃止となり、一般的には株式会社の設立しか法人化する方法がなくなりましたが、従業員が1人でも株式会社の設立ができるため、個人経営でも株式会社となっているところもあります。

弁護士事務所は司法書士事務所などと違い、平成14年の法律改正により弁護士1人だけの事務所であっても法人化することができます。

ですが、「従業員どころか弁護士が一人だけ」という弁護士事務所ではメリットが少ないと、法人化までは考えない方が多いと思います。

しかし、本当にメリットが少ないかというとそうでもありません。

確かに、法人化するにあたり法人登記などの手続きが必要になったり、それにかかる費用が発生したりします。

また、個人で支払っている弁護士会費に加え、弁護士事務所に対する弁護士会費に支払いも発生するため、経費の面だけで見ると経営が順調な弁護士事務所でないと難しいと言った点は否定できません。

しかしながら、厚生年金や厚生健康保険の加入は法人加入でなければ出来ないため、「国民観光保険が高額すぎる」「長期に雇っている従業員の福利厚生も考えないといけない」と言った場合には、メリットがあります。

これまで個人名でしていたリース契約や事務所賃貸契約なども法人名で出来るため、弁護士の公私を分けることができます。

また、弁護士事務所を法人化することで、在籍している弁護士が死亡した際に他の弁護士に弁護士事務所を譲渡しやすくなるメリットがあります。

親子2代で弁護士となっている場合、父が亡くなって息子が弁護士事務所を引き継ごうとした際に、「事務所の賃貸人の名前が父なので、継続して借りられなかった」「弁護士事務所の事業資金も父名義となっていたため、遺産分与で兄弟に分けなければいけなくなり、経営が難しくなった」という問題が出てくる可能性もあるため、事前に法人化するとそういったことが避けられます。